「杉でつくる家具 in 熊本」 ワークショップレポート

熊本県伝統工芸館で開催された「杉のDIYデザイン展」の期間中、2022年8月11日(木・祝)に、同館の工作室で「杉でつくる家具」ワークショップを開催しました。

熊本県伝統工芸館は工業デザイナー・秋岡芳夫の総合プロデュースで1982年に開館しました。場所は熊本城の眼前にあります。2016年の熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城ですが、現在は天守閣の耐震補強や内装の整備はほぼ完了し、熊本城の歴史を知ることができるようになり、2019年からは建物内部の見学もできるようになったそうです。


しかし、城の周りを見渡すと、現在も復旧工事の最中であることがわかります。ゴロゴロとお堀に並べられた崩れた石垣を築いていたたくさんの岩。一つひとつ計測し、番号が振られ、現存する画像資料と形状を比較しながら再配置していきます。欠けた部分や紛失したかけらもたくさんあるため、全体の復旧完了はなんと2037年になる予定とのこと。気の遠くなるような地道な作業に頭が下がります。

素人目には途方もない作業に思えますが、丁寧に並べられた石垣を見ると、少しずつ着実に進んでいるんだろう、という安心感が芽生えました。

整然と積まれた石垣はきれいですね。


ちょっとした熊本観光も堪能したところで、本題のワークショップレポートに移ります。

工芸館では定番の「筋交いの効いた2WAYスツール」ワークショップを実施し、合計11組の参加がありました。

杉でつくる家具のワークショップはノコギリを使った本格的な木工をマスターしてもらうため、講師1人につき受講生4名までと制限を設けています。今回は応募が10名を超えたので、今回は地元熊本とお隣の大分から公認インストラクターを招聘しました。

応援に来てくれたのは、地元熊本の工務店(新産住拓)に勤務している、一級建築士の泉保真史さん(下写真・右)。それから大分でシェーカー家具の製作を手がけながら「スギ工作クラブ」も開催している戸高晋輔さん。実力派の先輩のサポートのおかげで、僕も伸び伸びとレクチャーすることができました。

まずはワークショップの趣旨説明と皆さんの自己紹介をしていただいた後、泉保さんが用意した丸太のサンプルを見ながら「木取り」について学びました。

普段使われているのが丸太のどの部分なのか、板をどういう向きでとると、どんな木目が出るのか、木表、木裏の話、湿気乾燥で、木はどう反ってくるのか…などなど、身近な材料である杉の木をもっと知ることで、今回作る家具への愛着も湧いてきます。

材料の知識も深まったところで、いよいよノコギリレクチャー開始です!(下写真は筆者)

手に力を入れたらどうなるのか、どこに力を入れるのか、どういう姿勢を取ればよいか、などをお伝えして、前半はとにかく練習です。皆さんの姿勢を見ながら矯正していきます。

「杉でつくる家具」公認インストラクターの戸高さん(上写真)。僕の言葉では十分伝わっていたかったところを、実践形式で皆さんに伝えてもらうことができました。感謝です!

後半になって脚の材料をカットしていきます。

ノコギリカットの精度が甘く、切り口が曲がってしまった場合は、せんちゃんこと泉保さんがカンナで修正していきます。カンナの小気味よい音が響きます。

材料が切り終わったら組み立てです。

小学生もドライバーを使ってビスを締めていきます。最後まで元気よく頑張ってました。

最後に組み上がったスツールの脚のガタつき調整を僕が行い、ワークショップ終了です。

4時間におよぶワークショップを終え、熊本城をバックに記念撮影。皆さん無事完成させることができました。

受講生の皆さんに配布したアンケートから、参加しての感想を一部紹介してさせていただきます。

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・ゆっくりとした木工教室はとても良かった。ノコギリの話が良かったです。

・講師の先生方もとても優しく丁寧に教えてくださり、他の参加者の皆さんもよい雰囲気の中で楽しませていただきました!

・ものづくりの楽しさ、道具の使い方、木材の特徴など、学ぶことができました。子どもたちにとっても夏休みの思い出になりました。モノづくりを通して、普段使っているものにも、大切に接してほしいと思いました。

・本に書かれていないことも聞けたので良かったです。

・ぬまさんのご指導が楽しかったです!

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皆さんのアンケートは帰りの飛行機の中でゆっくり読ませていただきました。アンケートを読むと、「あーしたい。こーしたい」と妄想がどんどん膨らみます(笑)。

僕もしっかりと楽しませてもらいました。今度は家族で熊本に行ってみたいです。ではまた!


文:大沼勇樹(グループモノ・モノ)

「杉でつくる家具」公式サイト

1953年にデザインされた、DIY家具が現代によみがえる。