「杉でつくる家具 in 岐阜・飛騨」 ワークショップレポート

去る2021年7月24日と25日の2日間、岐阜県飛騨市のFabCafe Hida(ファブカフェ飛騨)でワークショップを開催しました。

FabCafe Hidaは、2019年に開催した「杉でつくる家具」の巡回展でもお世話になった施設です。そのときの様子は、本ウェブサイトで紹介していますので、合わせてご覧ください。

「杉のDIYデザイン展 in 飛騨」講習会レポート

さて、今回の杉でつくる家具ワークショップは、初心者(親子向け)ワークショップとして「筋交いが効いた2WAYスツール」、木工経験者向けとして「挟み脚の丈夫なスツール」の2コースをご用意しました。

「筋交いが効いた2WAYスツール」の講師を、公認インストラクターの笠原さんが、「挟み脚の丈夫なスツール」の講師を、同じく公認インストラクターの私こと、大沼が担当しました。

両方のスツールとも、材料には飛騨産の杉を使用しました。材料手配に協力いただいたのは地元の老舗工務店、田中建築の棟梁、田中清雄さんです。

ワークショップ前日に工場を訪ね、いろいろとお話を伺いました。

話している最中にも、そういえばこの間こんなの作った、と言って作ったものを見せてくださったり、とても楽しそうに今取り組んでいることをお話しいただきました。

「家をつくる過程でできた沢山の端材を余すことなく使いたい。」木を無駄にせず、どんな材料も生かす、という田中さんの木への向き合い方に感銘を受けました。

そんな思いを背に感じながら、ワークショップ当日を迎えました。

今回のワークショップの初めには、『杉でつくる家具』の原著である『家庭の工作』の話やKAKデザイングループお話をグループモノ・モノの菅村さんから少々。これから手がける家具の背景を学んでいただいた後、いよいよワークショップスタートです。

こちらは「挟み脚の丈夫なスツール」ワークショップの会場です。FabCafe Hidaの敷地内にある蔵を改修した工房スペースをお借りいたしました。

まず初めに皆さんに自分で使う木材を選んでもらいました。木目、色、節。いろんな表情がありますね。

自己紹介をしてから早速ノコギリのレクチャーに入ります。

身振り手振り、そして言葉でコツをお伝えします。

練習が終わったら、いざ実践です。

墨付けはスコヤと型紙を使って行います。しっかり材料に合わせて、必要な箇所に鉛筆で線を引いていきます。

墨付けが完了したら、ひたすらノコギリでカットしていきます。

皆さんの様子を見ながら、姿勢を正していきます。

大切にしているのは、「今の姿勢だと、どんなふうにノコギリが進むのか」を伝え、そうならないために「顔、肩、肘、手首、胸、腰、足をどう配置すると良いか」を伝えることです。

原因を伝え、修正するポイントを伝えるということです。

カットが終わったら「相欠き」の加工をします。相欠きというのは、2枚の板材を十字に組み合わせるために、溝を作る加工のことで、ノコギリとノミを使って作業をします。

このときたまたま大工の田中さんも会場に来られました。プロの大工さんに見つめられながらのレクチャーで、講師の私も生徒さんのように緊張してしまいました…。

相欠きは、欠き取りがゆるすぎては効かないので、加工は少々逃げてしまいがちです。どうしても修正をしなければならず、その修正が厄介です。少しずつ削って具合を見ます。

加工が終わったらいよいよ組み立てです。

ここからはスピードアップ。

どんどん組み上がっていくので、それまでの疲れが飛んで行きます。

そして、

完成!最後は笑顔で!

皆さんお疲れ様でした〜。

「挟み脚のスツール」のワークショップはじつは今回が初めてでたが、なんとかできて僕もほっと一息でした。


続いては、FabCafe Hidaのカフェスペース内で行われた「2WAYスツール」のワークショップの様子です。お子さんもOKということで、小学生からシニアの方まで幅広い年代の方に参加していただきました。

非力なお子さんには、ノコギリを両手で持ってまっすぐ切る方法をレクチャーします。帽子をかぶっているのは講師の笠原先生。

おじいちゃんおばあちゃんと孫くらい年齢が離れていても、一緒に楽しめるのが杉家具ワークショップのよさです。ノコギリというローテクな道具を使うからこそ、誰でも安全に楽しめるのです。

脚の加工が終わったら、次は座面を取り付けるためのビスの位置の墨付けを行い、下穴をあけます。

杉家具ワークショップでは、手工具の効率的な使い方をとことんレクチャーします。ドライバーの正しい使い方をもそのひとつ。ただ回すだけではビスは入っていってくれません。しっかり体重をかけて”押し回す”ことがポイントです。

こちらも組み立て始めると時間はあっという間に過ぎていきます。

組み上がったら講師が脚先のガタつきをチェック。ガタつく場合は、脚先をカットして微調整を済ませたら完成です。

皆さん無事完成!がんばった甲斐あって、美しい椅子に仕上がりました。ワークショップ終了後は、初心者コース、経験者コースも一緒に集まってもらい、ひとことずつ感想を述べていただきました。

最後は皆さん中庭に集まって、今日ワークショップをやってみての感想や気づきを共有しました。この時間も、自分が意識してなかったことが聞けたりするので、とても大切にしている時間です。

こんな感じで1日目は終了しました。


2日目も1日目と同じくワークショップ開催。

参加者が少なめでしたので、会場を一つにしての開催です。

こちらも無事完成。

2日目はワークショップ終了後、作った椅子に座り、近くの森でコーヒーをいただくという「森カフェ」を実施しました。(残念ながら初日はゲリラ豪雨で中止)。各自、自作のスツールを持って、FabCafe Hidaから車で約7分ほどにある森まで移動します。

車を降りてスツールとコーヒーを持って少し歩くと、飛騨古川の町が眺められます。

写真左には飛騨の広葉樹。この写真の後ろには針葉樹の森が広がっています。

疲れを癒しながらスツールに腰掛け、雑談まじりに今日の感想や気づきを共有します。

体の使い方をこんなに意識したことがなかった、という感想がありまして、僕としては嬉しい感想でした。実は何事も体全体を使っているので、手先だけじゃなくて、体全体事としてとらえられるようになると、普段の作業も負担が減らせるんです。


…まぁそんな真面目な話は一瞬でして、皆さんこの場所の空気を味わうようにのんびりと過ごしました。疲れが本当にスーッと抜けていくようで、ワークショップ終わりの余韻というのも大事にしたいと思いました。

最後はみんなで記念撮影をして、2日間のワークショップの幕を閉じました。

また来年も行きたいです。では!


文:大沼勇樹(グループ モノ・モノ)

「杉でつくる家具」公式サイト

1953年にデザインされた、DIY家具が現代によみがえる。